業務の視える化は、なぜ経営の覚悟を問うのか ――ガバナンスは足元から始まる 第3回
業務の視える化は、いずれ取り組まねばならない課題である。
人の入れ替わりが進み、説明責任が重くなる中で、業務の全体像が見えない状態を放置することは、もはや現実的ではない。
それにもかかわらず、業務の視える化は「現場の改善テーマ」として扱われがちだ。
しかし、これは本質的には経営課題である。
ガバナンスは「制度」ではなく「足元」で決まる
ガバナンスや内部統制の重要性は、繰り返し語られてきた。
だが、実際に問われるのはもっと基本的な点だ。
- 誰が
- どの業務を
- どの判断のもとで
- どのように行っているのか
これを説明できなければ、どれほど立派な制度やルールを掲げても、それは砂上楼閣にすぎない。
ガバナンスとは、会議体や規程の話ではなく、日々の業務がどのように動いているかを把握できているかという足元の問題である。
視える化が経営の覚悟を問う理由
業務の視える化が経営の覚悟を問うのは、そこに「未知」が含まれているからだ。
視える化に取り組めば、これまで把握できていなかった実態や、想定していなかった判断の積み重ねが表に出てくる。
それは誰かを責めるためのものではない。
しかし同時に、「分かっているつもりだった」前提が揺らぐ可能性を含んでいる。
未知がある以上、
- 手が止まる業務が見えるかもしれない
- 説明しづらい判断が浮かび上がるかもしれない
そうした不安が生じるのは自然なことだ。
だからこそ、業務の視える化は現場に丸投げできる性質のものではない。
未知が出てくることを前提に、「それでも向き合う」と組織として引き受ける覚悟がなければ、途中で手が止まる。
覚悟とは「過剰に構えること」ではない
ただし、ここで言う覚悟とは、大げさに構えることではない。
全社の業務を一気に整理しきる決意や、完璧な姿を描いてから始めることを意味しない。
覚悟とは、
分からないことが出てくる前提で、小さく始めることを許容する姿勢である。
コンサルに任せきれない理由
緊急性が高く、失敗が許されない課題では、外部の専門的な支援が必要な場面もある。
しかし、全社の業務すべてをそのやり方で進めることは現実的ではない。
業務の視える化は、一度きりの成果物を作ることではなく、
自分たちで描き、見直し、更新していく力を育てる営みだからである。
小さなトライが、組織力を育てる
業務を描いてみることで、
- 手が止まるところ
- 無理な調整で回っている部分
- 特定の人に依存している工程
が見えてくる。
それらは失敗ではない。
業務が現実に合わせて調整されてきた証拠である。
業務の視える化は、現場改善の延長ではない。
経営が引き受ける課題なのである。

