働き方改革は、確かに進んだ

ワークライフバランス、働き方改革、DX。
この数年、日本の職場を取り巻くキーワードは大きく変わった。

ノー残業デー、フレックスタイム、テレワーク。
働く時間や場所の自由度は確かに高まり、
**「仕事と生活の両立」**は、以前より当たり前に語られるようになった。

働き方改革は、一定の成果を上げている。
この点を否定する必要はない。

だからこそ、今、あえて立ち止まりたい。

時間は変わった。では、仕事は?

働き方改革という言葉のもとで見直されてきたのは、主に勤務制度や時間の使い方だった。一方で、仕事の単位、判断の流れ、責任の所在といった仕事のやり方そのものは、どこまで変わっただろうか。

時間は短くなった。
場所の自由度も上がった。

では、仕事は本当に変わったのだろうか。

現場から聞こえてくる違和感

現場からは、こんな声が聞こえてくる。

「時間は短くなったが、仕事の密度と緊張感が上がった」

仕事量や業務の進め方が大きく変わらないまま、時間だけが短縮されれば、短い時間内に仕事が集中する。
この違和感は、特定の業界や組織に限った話ではない。

それは感覚論ではない

この現場感覚は、単なる印象論ではない。
労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査でも、働き方改革により労働時間は短縮傾向にある一方で、業務量や負担の軽減には必ずしも結びついていない可能性が示唆されている。

仕事の進め方を見直さないまま時間だけを削減すれば、
1時間あたりの負荷が高まる。
これは個人の努力不足ではなく、仕事の設計の問題である。

「DXは進めている」という声に、もう一歩だけ踏み込む

こうした問題提起に対して、
「DXは進めている」「デジタル化はやっている」
という声もよく聞こえてくる。

確かに、申請のオンライン化や内部事務の電子化は重要だ。
いまや、それらは前提条件と言ってよい。

しかし、紙が画面に置き換わっただけで、
仕事のやり方まで変わったと言えるだろうか。

業務の単位、判断の流れ、責任の所在が従来のままであれば、
ツールが変わっても仕事の本質は変わらない。

働き方改革の本質は、DXの「X」と同じところにある

デジタル化は手段であって、目的ではない。
DXの本質が「D(デジタル)」ではなく
「X(変革)」にあるように、
働き方改革の本質もまた、仕事をどう設計し直すかにある。

・どこで判断が行われているのか
・なぜその結論に至ったのか
・その根拠は、どのように残されているのか

こうした問いに向き合わない限り、
時間やツールを変えても、働き方の実感は変わらない。

油断していないか、いま一度問い直したい

働き方改革は、失敗ではない。
むしろ、ここまで来たこと自体は前進だ。

ただし、
「改革は一段落した」
「もうやることはやった」
と感じた瞬間に、次の改善は止まる。

働き方改革が進んだと油断していないか。
その問いは、DXの次の一手を考える問いと、実は同じところを指している。

時間を変えた今こそ、
仕事のやり方そのものを問い直す段階に来ているのではないだろうか。