その経営判断、後から説明できますか? ―― 文書管理からではなく「説明責任」から点検するチェックリスト ――
はじめに
前回の記事では、
「なぜ米国企業は『文書管理ポリシー』と言わないのか」
という視点から、
文書ではなく「説明責任」から経営を設計する考え方を整理した。
本稿では、特定の企業や事例を評価することはしない。
代わりに、読者自身が自社に当てはめて考えるための視点を提示したい。
なぜチェックリストなのか
文書管理やISO規格の議論は、
どうしても「できている/できていない」という
外形的な評価になりがちである。
しかし、ここで問いたいのはそこではない。
経営が下した判断を、
数年後に第三者へ説明できるか。
この一点である。
以下のチェックリストは、
制度やシステムを点検するものではなく、
経営判断の説明可能性を点検するためのものである。
経営Evidenceチェックリスト(簡易版)
① 経営判断の記録
- 重要な経営判断について、
*「なぜその判断をしたのか」*を文書で説明できるか - 他の選択肢を検討した事実や、
採用しなかった理由が残っているか
② 実施しなかった判断・先送りの判断
- 実施できなかった施策や、
判断を先送りした理由が記録されているか - 「やらなかった判断」を、
後から説明できる形で残しているか
③ リスク認識の記録
- 問題やリスクを認識した時点の記録が残っているか
-
- 分かっていなかった
- 分かっていたが判断しなかった
を区別できるか
④ 経営レベルでのレビュー
- これらの記録が、
現場や部門に閉じず、
経営レベルでレビューされる仕組みがあるか
⑤ 将来の第三者視点
- 5年後、10年後に第三者から
*「なぜその判断をしたのか」*と問われたとき、
文書で説明できると自信を持って言えるか
このチェックリストの使い方
このチェックリストは、
- 文書管理規程を点検するためのものではない
- ITシステムの有無を問うものでもない
経営が、自らの判断を説明可能な形で残しているか
を確認するためのものである。
すべてに「はい」と答えられる必要はない。
むしろ重要なのは、どこで迷ったかである。
その「迷い」こそが、
経営として向き合うべき論点である。
文書管理の話に戻さないために
このチェックリストを使う際、
「文書管理が弱いからだ」という結論に戻ってしまうと、
本質を見失う。
問うべきなのは、次の点である。
この判断は、
もともと説明するつもりで下されたものだったか。
文書は結果であり、原因ではない。
おわりに
文書情報マネジメントは、
事務の話でも、ITの話でもない。
経営が、自らの判断を引き受けるための前提条件である。
他社を評価する必要はない。
まずは、自社の経営判断が
後から説明できる形で残っているかを
静かに点検してみてほしい。

