はじめに

公文書館をめぐる議論では、
「共同利用」という言葉がしばしば用いられる。
しかし、その内実は必ずしも整理されておらず、
実際に存在している取り組みと、制度構想として語られるものとが混在している。

本稿では、
日本における公文書館の共同利用について、
実在が確認できるものは何か、どこまでが限定的なのかという点に絞って整理する。

複数自治体による共同設置型

複数の自治体が関与し、
非現用文書の保存・利用を目的とする公文書館機能を
制度として共同で設けている例は、日本にも存在する

ただし、
複数自治体による共同設置型は、日本では一般的な形態ではない。
現時点で制度的に確立した代表例として挙げられるのは、
私の知る限りでは、福岡県の事例に限られる。

福岡県では、市町村単独では担いきれない公文書館機能について、
一部事務組合という法的枠組みを用い、
市町村文書の保存・提供を共同で担う体制が制度化されている。
この点で、共同利用が机上の構想ではなく、実際に運用されている例であることは明確である。

都道府県が市町村文書を受け入れる型

次に、都道府県が市町村文書を受け入れる型についても、実例は存在する。
ただし、これは市町村の非現用文書を全面的・恒常的に引き受ける制度ではない。

実際には、

  • 歴史的価値が特に高い文書
  • 市町村合併に伴い保存主体が不明確になった文書
  • 施設や体制の制約により、市町村単独での保存が困難となった場合

といった、限定的・救済的な受入にとどまっている。

したがって、この型は
「共同利用が全面的に制度化されている例」ではなく、
保存されない事態を回避するための補完的な運用として位置づけるのが妥当である。

大学・研究機関との連携

大学や研究機関との連携についても、実例は確認できる。
ただし多くの場合、大学が自治体公文書の最終的な保存先となるわけではない。

実態としては、

  • 目録作成
  • 修復
  • デジタル化
  • 調査研究・利用支援

といった、公文書館機能の一部を補完する連携として現れている。
この点で、大学連携は「共同利用」というよりも、
機能連携として整理する方が実態に近い。

おわりに

以上を踏まえると、日本における公文書館の共同利用は、

  • 複数自治体による共同設置型については、実在するが例外的
  • 都道府県による市町村文書受入は、限定的・救済的運用にとどまる
  • 大学連携は、最終受け皿ではなく機能補完として成立している

という整理が妥当である。

日本には、
非現用文書の行き先を一律に保証する共同利用制度は存在しない
一方で、条件付き・部分的ではあるものの、
共同利用の実例が確かに存在することも事実である。

まずは、この実態を正確に整理することが、
次の議論の出発点になるだろう。