はじめに

日本ではしばしば
「自治体に公文書館があるか、ないか」
という問い方がされます。

しかし実際には、自治体における公文書館のあり方は一様ではなく、
制度として成立している形態にも複数のバリエーションがあります。

本稿では、
「建物の有無」ではなく、「非現用文書を引き受ける制度が成立しているか」
という観点から、
日本の自治体に見られる主な形態を整理します。

評価や課題整理は行わず、
まずは現状の整理にとどめます。

1.独立型公文書館

条例等に基づき、
専用施設として公文書館を設置している形態です。

  • 専用の建物・書庫を有する
  • 非現用文書の移管点が制度上明確
  • 保存・利用・公開の責任主体が明確

市町村レベルでは数は多くありませんが、
制度としての完成度は最も高い形態といえます。

政令指定都市や一部の中核市で見られます。

2.複合施設内設置型公文書館

図書館、博物館、文化施設などと同一施設内に設置されている形態です。

  • 施設は共有だが、公文書の保存・移管は制度化されている
  • 利用者にとってアクセスしやすい
  • 行政資料と歴史資料が近接して扱われる

専用施設ではないものの、
公文書館としての機能と責任が明確であれば、制度は成立している
と整理できます。

3.行政内部公文書館機能型(庁内組織型)

専用施設としての「館」は設けず、
庁内組織として公文書館機能を担っている形態です。

本稿では、この形態を
「行政内部公文書館機能型(庁内組織型)」
と呼びます。

この形態の重要なポイントは次の点です。

  • 現用文書の作成・管理を担う部門とは切り分けられている
  • 現用段階を終えた文書を引き受ける担当組織が、条例や規程で位置づけられている
  • 非現用文書の保存・利用について、一定の独立性が確保されている

単に文書主管課が現用管理の延長で保存まで担っているケースは、
ここには含めません。

日本の自治体では、
現実的かつ重要な成立形態の一つといえます。

4.歴史資料館型(制度的受入を行う場合)

歴史資料館や市史編纂部門などが、
制度に基づいて公文書を受け入れている形態です。

  • 行政文書を歴史資料として体系的に保存
  • 市史編纂や地域史研究と連動
  • 受入対象や移管ルールが明確であることが前提

単なる展示・収集活動ではなく、
公文書管理制度の一環として位置づけられている場合に限り、
この形態として整理できます。

おわりに

このように、日本の自治体における公文書館のあり方は、

  • 独立型
  • 複合施設内設置型
  • 行政内部公文書館機能型
  • 歴史資料館型

と、複数の形態が併存しています。

いずれの形態においても重要なのは、
非現用文書を引き受ける制度が成立しているかどうか
という点です。

本稿では、まず日本の現状整理にとどめました。
この整理を踏まえ、
次にどのような制度設計が考えられるのかについては、
別の機会に改めて考えてみたいと思います。