第7回(最終回) なぜ公文書管理は「改革」にならなければならないのか ――DXでも効率化でもない、本当の理由
はじめに
本シリーズでは、
文書・記録管理を
「事務」や「補助業務」としてではなく、
価値創造と信頼を同時に成立させる経営基盤として捉え直してきました。
現場の困りごとから始まり、
内部統制、説明責任、
そして自治体における制度としての公文書管理条例へ。
最後に残る問いは、
なぜこれが「改革」と呼ばれなければならないのか
という点です。
「改革」とは、何を変えることなのか
改革という言葉は、
しばしば次のように使われます。
- 業務を効率化する
- ITを導入する
- 手続きを簡素化する
もちろん、これらは重要です。
しかし、それだけでは
公文書管理は「改革」にはなりません。
なぜなら、
それらは多くの場合、
やり方を変えているだけだからです。
公文書管理が問いかけているもの
本シリーズで見てきたように、
公文書管理が本質的に問いかけているのは、
- 誰が判断したのか
- なぜその判断をしたのか
- その判断を、後から説明できるのか
という、
組織の意思決定の在り方そのものです。
これは、
ツールや手順の話ではなく、
組織の姿勢の問題です。
DXでも、効率化でも、代替できない理由
DXや効率化は、
文書管理を「楽にする」ことはできます。
しかし、
- 判断の根拠が残らない
- 責任の所在が曖昧なまま
- 説明は、その都度作り直す
という状態は、
DXだけでは解消されません。
公文書管理が扱っているのは、
速さではなく、
説明可能性だからです。
改革とは、「日常の判断」を変えること
公文書管理が改革になるのは、
それが次のことを変えるからです。
- その場しのぎの判断を
- 後から説明できる判断に変える
- 個人の記憶に依存した業務を
- 組織の記録に基づく業務に変える
これは、
特別なプロジェクトではありません。
日々の業務の中で、
「この判断は、後から説明できるだろうか」
と一度立ち止まること。
その積み重ねが、
組織の在り方を変えていきます。
改革の成果は、すぐには見えない
公文書管理の改革は、
短期的な成果が見えにくい取組です。
- すぐに評価されない
- 劇的な数字は出ない
- 問題が起きなければ、注目されない
それでも、
問題が起きたとき、
説明を求められたとき、
初めてその価値が明らかになります。
信頼は、設計によってしか生まれない
信頼は、
努力や善意だけでは維持できません。
- 説明できること
- 検証できること
- 振り返れること
これらが
制度と日常業務の中に組み込まれているか
によって、信頼は左右されます。
公文書管理とは、
そのための設計です。
おわりに
公文書管理が「改革」と呼ばれるのは、
それが単なる業務改善ではなく、
組織の意思決定と説明責任の在り方を問い直すからです。
価値創造と信頼を、
どちらかではなく、同時に成立させる。
そのための経営基盤として、
文書・記録管理を再定義する。
本シリーズが、
その出発点になれば幸いです。
本シリーズで扱っているテーマ
本稿は、文書・記録管理を「事務」や「補助業務」としてではなく、
価値創造と信頼を同時に成立させる経営基盤として捉え直す
連載シリーズの一編です。
シリーズ全体では、
民間企業から自治体へと視点を移しながら、
現場・経営・制度という異なるレイヤーから、
文書・記録管理の意味を構造的に整理してきました。
シリーズ構成
- 第1回
価値創造と信頼を同時に成立させる経営基盤
――「四本柱」で考える、これからの文書・記録管理 - 第2回
なぜ多くの企業は「文書管理」でつまずくのか
――分断された四本柱という構造問題 - 第3回
文書・記録は誰のために存在するのか
――現場の困りごとから見えてくる、本来の役割 - 第4回
内部統制はなぜ「回っていない」と感じられるのか
――現場の記録が、説明責任につながらない理由 - 第5回
自治体における「経営の最上位責任」とは何か
――企業経営との共通点と決定的な違い - 第6回
公文書管理条例は、何のために存在するのか
――事務規程ではなく「住民との約束」 - 第7回(最終回)
なぜ公文書管理は「改革」にならなければならないのか
――DXでも効率化でもない、本当の理由
シリーズを読み終えた方へ
このシリーズは、
「正しいやり方」を示すものではありません。
どう考えるべきかを、
構造として整理したものです。
あとは、
それぞれの組織で、
どこから手を付けるかを選ぶだけです。
文書管理や公文書管理について、
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