公文書管理は「仕事のかたち」から考える ― 業務分類に、もう一つの視点を重ねる 第6回
はじめに
― なぜ、もう一度立ち返るのか
第1回では、自治体業務を
定形事務/事案処理型(ケース処理型)/プロジェクト型
という三つの**「仕事のかたち」**で整理しました。
本稿は、新しい分類を提示する回ではありません。
これまでの検討を踏まえ、
この三つの「仕事のかたち」が、
なぜ公文書管理を考えるうえで重要なのかを、
改めて簡潔に整理するための回です。
業務分類だけでは、捉えきれないもの
公文書管理というと、
ファイル基準表に代表されるような
業務内容による分類がまず思い浮かびます。
これは、公文書管理の基礎として欠かせない整理です。
どの業務で、どのような文書が生じるのかを明らかにすることは、
今後も重要であり続けます。
しかし、実務を見ていくと、
業務分類だけでは整理しきれない違いが現れます。
行政の仕事は、
すべてが
「定型的な受付・処理・整理・保存」
で進むわけではありません。
「仕事のかたち」という、もう一つの見方
そこで第1回では、
業務の名称や分野ではなく、
仕事がどのように進むのかという視点から、
三つの「仕事のかたち」を示しました。
- 定形事務
あらかじめ想定された手順に沿って、一件ごとに完結する仕事 - 事案処理型(ケース処理型)
特定の事案に紐づき、判断を伴いながら対応していく仕事 - プロジェクト型
目的と期間を持ち、検討や意思決定を積み重ねながら進む仕事
この整理は、
業務内容の違いを示すものではありません。
同じ業務であっても、仕事のかたちは異なり得る
という点を意識するための整理です。
「非定型」を分解した、という位置づけ
もともとは、
①定形、②非定型、③プロジェクト型
という感覚的な捉え方から出発しました。
検討を進める中で明らかになったのは、
「非定型」と一括りにしていた仕事の中に、
進み方の異なるものが混在しているという点です。
そこで本シリーズでは、
非定型という言葉をそのまま使うのではなく、
仕事の進め方の違いが見える形に整理し直しました。
その結果が、
定形事務/事案処理型/プロジェクト型
という三つの「仕事のかたち」です。
これは分類を増やすためではなく、
非定型の中身を分解し、
実務に即した言葉に言い換えたものです。
事案処理型の中にも、二つのタイプがある
なお、本シリーズでは、
事案処理型の仕事についても、
すべてを同じ性質として扱っていません。
事案処理型の中には、
- 一度の対応で完結するが、
判断や対応内容の重さから
事案として整理しておく必要がある単発型と、 - 特定の事案に紐づき、
前回の判断を前提に、
判断が時間をまたいで積み重なっていく継続型
の二つが含まれます。
本シリーズで主に取り上げてきたのは、
後者の継続型の事案処理です。
これは、定形事務の「例外」ではなく、
仕事の進み方そのものが異なる一つの仕事のかたちとして
意識しておく必要があるためです。
おわりに
― 公文書管理は、仕事のかたちを見誤らないことから始まる
公文書管理は、
文書を整理・保存するための技術論ではありません。
まず必要なのは、
いま扱っている仕事が、
どのような「仕事のかたち」なのか
を見誤らないことです。
業務内容による分類に加えて、
仕事のかたちという視点を重ねる。
この二つをあわせて考えることで、
判断を組織として引き受ける公文書管理が、
はじめて無理なく見えてきます。
本シリーズは、
実装や制度の話に入る前に、
その前提となる考え方を整理することを目的としてきました。
公文書管理を考える際の、
一つの土台として役立てていただければ幸いです。

