「文書管理は、文書を管理する仕事ではなかった」(民間企業第6回)
これまでの回で見てきたように、
多くの企業では文書が整理され、保存されているにもかかわらず、
説明や引き継ぎの場面で苦労が生じています。
そのたびに、
「整理が足りないのではないか」
「ルールを厳しくすべきではないか」
と考えがちですが、
実は問題はそこにありません。
私たちは長い間、
文書管理を「文書をどう扱うかの話」だと考えてきました。
どのフォルダに入れるか、
どう分類するか、
どれくらい保存するか。
しかし、現場で本当に困っているのは、
文書そのものではありません。
困っているのは、
「なぜこの判断になったのか」
「どこで何を比べ、何を捨てたのか」
といった、業務の中で行われた判断の説明です。
つまり、
文書管理の本当の対象は、
文書ではなく、
業務と判断の証拠だったのです。
この考え方を、
はっきりと示しているのが
ISO 30301 です。
ISO 30301 は、
文書の整理方法を細かく定める規格ではありません。
保存期間や分類表を作ることが目的でもありません。
この規格が求めているのは、
業務を理解したうえで、
どの場面で、どの判断が行われ、
どんな記録が後から必要になるのかを
事前に考えることです。
言い換えれば、
「どう整理するか」を考える前に、
「この仕事では、何を説明できなければならないのか」
を考える、ということです。
ここで初めて、
整理や分類の意味が定まります。
分類は出発点ではなく、
業務理解の結果として決まるものだからです。
この視点に立つと、
文書管理の位置づけは大きく変わります。
- 文書管理は、仕事の後片付けではない
- 監査のためだけの作業でもない
- 管理部門だけの専門業務でもない
業務の流れそのものの中に組み込まれた活動になります。
これまで
「文書管理がうまくいかない」と感じていた違和感は、
やり方が間違っていたからではありません。
見ている対象が、少しズレていただけです。
文書管理とは、
文書を管理することではなく、
業務と判断を、後から説明できる状態に保つこと。
それが、
このシリーズを通じて見えてきた答えであり、
ISO 30301 が示している
文書管理の本当のスコープです。

