第6回 公文書管理条例は、何のために存在するのか ――事務規程ではなく「住民との約束」
はじめに
前回は、自治体における「経営の最上位責任」が
住民への説明責任として成立していることを整理しました。
今回は、その説明責任を
制度として担保する仕組みに焦点を当てます。
それが、公文書管理条例です。
公文書管理条例は、
文書をきれいに整理するためのルールではありません。
自治体が住民に対して果たすべき説明責任を、
継続的に成立させるための起点です。
なぜ「条例」でなければならないのか
多くの自治体には、
すでに文書管理規程や事務規程が存在します。
しかし、それらは原則として
内部運用のルールにとどまります。
一方、条例は、
- 議会で議論され
- 公に制定され
- 住民に対して効力を持つ
という点で、性質がまったく異なります。
条例とは、
自治体が住民に対して
「このように説明責任を果たします」と
法的に約束する行為なのです。
条例は「ゴール」ではなく「起点」である
ここで重要なのは、
条例を最終到達点として捉えないことです。
条例は、
「これを守れば終わり」というゴールではありません。
むしろ、そこから
何をどう設計するかが問われます。
この関係を、構造として示すと次のようになります。
公文書管理条例を起点とした構造
この図が示していること
この図が伝えたいのは、
非常にシンプルな関係です。
- 条例は起点である
- その下で、公文書管理マネジメントが設計される
- その設計が、
- 政策の質
- 業務の安定性
- 情報管理の適切性
に影響する
つまり、
条例は「文書をどう保存するか」を決めるものではなく、
判断・責任・検証をどう成立させるかを定める枠組みです。
事務規程だけでは、なぜ足りないのか
事務規程や内規は、
業務を円滑に進めるためには有効です。
しかし、
- 誰が
- どの判断に
- どの責任を負うのか
という点について、
住民に対して説明する根拠にはなりません。
条例を起点としない限り、
公文書管理は
「内部で守っているルール」の域を出ないのです。
条例があることで、初めて設計できること
条例を起点に据えることで、
次の問いが初めて正面から扱えるようになります。
- どの判断を記録として残すべきか
- 何をもって「説明できた」と言えるのか
- 誰が検証し、誰が責任を負うのか
これらは、
事務改善の話ではなく、
統治の設計の話です。
おわりに
公文書管理条例は、
文書整理のための技術的ルールではありません。
それは、
自治体が住民に対して行う
説明責任の宣言であり、
その責任を果たし続けるための
制度的な起点です。
次回はいよいよ最終回として、
なぜ公文書管理が
「改革」と呼ばれなければならないのかを整理します。
本シリーズで扱っているテーマ
本稿は、文書・記録管理を「事務」や「補助業務」としてではなく、
価値創造と信頼を同時に成立させる経営基盤として捉え直す
連載シリーズの一編です。
シリーズ全体では、
民間企業から自治体へと視点を移しながら、
現場・経営・制度という異なるレイヤーから、
文書・記録管理の意味を構造的に整理しています。
シリーズ構成
- 第1回
価値創造と信頼を同時に成立させる経営基盤
――「四本柱」で考える、これからの文書・記録管理 - 第2回
なぜ多くの企業は「文書管理」でつまずくのか
――分断された四本柱という構造問題 - 第3回
文書・記録は誰のために存在するのか
――現場の困りごとから見えてくる、本来の役割 - 第4回
内部統制はなぜ「回っていない」と感じられるのか
――現場の記録が、説明責任につながらない理由 - 第5回
自治体における「経営の最上位責任」とは何か
――企業経営との共通点と決定的な違い - 第6回
公文書管理条例は、何のために存在するのか
――事務規程ではなく「住民との約束」 - 第7回(最終回)
なぜ公文書管理は「改革」にならなければならないのか
――DXでも効率化でもない、本当の理由文書管理や公文書管理について、
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