はじめに

前回の記事では、自治体の仕事を「定型型」「事案処理型」「プロジェクト型」という3つの仕事のかたちで整理しました。
読みながら、「なるほど」と感じた一方で、次のような疑問が浮かんだ方も多いのではないでしょうか。

「では、自分が担当しているあの業務は、どこに当てはまるのだろうか?」

この疑問が浮かぶのは、ごく自然なことです。
なぜなら、自治体の多くの業務は、最初から一つのかたちにきれいに分類できるようには設計されていないからです。定型事務として始まった仕事が、途中で判断を伴う事案処理に変わることもあれば、事案対応の積み重ねが、結果としてプロジェクトのような様相を帯びることもあります。

本記事では、「正解の分類」を示すことを目的にしません。
むしろ、どこで迷うのか、なぜ迷うのかを一緒に整理することを目的とします。迷いが生じる業務こそ、記録の扱いを丁寧に考える必要があるからです。

「この業務は定型だろうか、それとも事案処理だろうか」
そう立ち止まって考えること自体が、公文書管理を見直す第一歩になります。

第1章 「定型事務だと思っていた業務」が揺らぐ瞬間

1-1 定型事務として始まる仕事の多さ

自治体の多くの業務は、定型事務として設計されています。
様式があり、処理手順があり、前例もある。新人職員であっても、マニュアルを見ながら進められるようになっている仕事は少なくありません。

このような業務は、「定型事務」として理解されるのが自然です。
申請を受け付け、要件を確認し、決定し、通知する。
ここまでを振り返れば、「この業務は定型だ」と感じるのも無理はありません。

しかし、この時点で見ているのは、業務の入り口にすぎません。

1-2 どこから「仕事のかたち」が変わるのか

同じ業務であっても、途中で立ち止まる瞬間があります。

  • 要件は満たしているが、そのまま処理してよいか迷う
  • 前例はあるが、今回の事情は少し違う
  • 関係部署や外部との調整が必要になる

こうした場面では、マニュアルどおりに進めることができません。
「どう判断するか」「どこまで考慮するか」という問いが生まれます。

この瞬間、業務は単なる定型事務ではなくなります。
結果だけでなく、どのように考え、なぜその判断に至ったのかが重要になるからです。

1-3 「揺らぎ」は例外ではなく、業務の一部

定型事務として始まった業務が、途中で判断を伴う形に変わる。
これは特別な例外ではなく、自治体業務ではごく普通に起きていることです。

重要なのは、業務のかたちは固定されていないという点です。
この揺らぎを意識することで、「ここから先は、記録の扱いを丁寧に考える必要がある」と気づくことができます。

第2章 当てはめの基本ルール

― 3つの仕事のかたちを見分ける視点

ここでは、業務を無理に分類するためではなく、
考えるための手がかりとして、3つの視点を示します。

2-1 結果だけで説明できるか?

― 定型型業務の見分け方

この業務は、結果が分かれば説明できるだろうか?

手順どおりに処理されたこと、結果が正しいことが確認できれば足りる業務は、定型型業務として整理できます。
「なぜこの結果になったのか」という問いにも、「手順どおりに処理したから」と答えられる仕事です。

2-2 判断の理由が問われるか?

― 事案処理型業務の見分け方

なぜその判断に至ったのかを、後から説明する必要があるだろうか?

複数の選択肢があり、どれを選ぶか迷った業務は、事案処理型の性格を持ちます。
結果だけではなく、判断の背景や考慮した事情が重要になります。

2-3 判断が更新され続けるか?

― プロジェクト型業務の見分け方

判断が一度で終わらず、状況に応じて見直され続けるだろうか?

企画や検討、調査のように、判断の積み重ねそのものが業務の中身になる仕事は、プロジェクト型として整理する方が自然です。

2-4 3つの視点は、排他的ではない

この3つは、業務を一つに決めつけるためのものではありません。
どこで結果だけでは足りなくなるのか、どこで判断が更新され始めるのかに気づくための視点です。

第3章 よく迷う業務を、あえて分類してみる

3-1 相談・照会対応の仕事は、どこに入るか

想定問答がある一方で、説明の仕方によってその後の対応が変わる業務です。
定型で始まりつつも、事案処理型の性格を帯びやすい仕事だと言えます。

3-2 許認可・更新・指導の仕事は、どう考えるか

手続としては定型的でも、個別事情をどう考慮するかで判断が分かれます。
定型型と事案処理型の境目に位置するため、迷いが生じやすい業務です。

3-3 企画・検討・調査業務は、なぜプロジェクト型なのか

非定型だからではなく、判断が更新され続けること自体が業務の本体だからです。

3-4 分類に迷う業務が示していること

迷いが生じる業務は、
判断があり、後から説明が求められる可能性が高い業務です。
そこにこそ、公文書管理の視点が必要になります。

第4章 分類に迷うこと自体が、大事なサイン

分類に迷うのは失敗ではありません。
それは、説明責任が重くなるポイントに気づいているというサインです。

「どの型か」よりも、
どこで仕事の性格が変わったのかに注目することが重要です。

おわりに

― 「当てはめる」ことで見えてくるもの

分類表を完成させることが目的ではありません。

自分たちの業務の中で、
どこに判断があり、
どこで説明が必要になるのかに気づくこと。

それが、公文書管理を考えるうえでの出発点です。

次回予告(第3弾)

次回は、
**特定の個人や団体に長く紐づく「継続する事案」**を取り上げます。

  • 年度で切れない仕事
  • 判断が積み重なっていく業務
  • 事案処理型の中でも、特に扱いが難しい領域

これを、公文書管理の視点でどう整理すべきか。
具体的に考えてみたいと思います。