多くの自治体では、
文書は整理され、年度ごとにまとめて保存されています。
それでも、住民説明や監査、引き継ぎの場面で、

  • 「なぜこの判断になったのか」
  • 「誰が、どこで、何を根拠に決めたのか」

を説明するのに、時間と労力がかかります。

これは、
文書管理が甘いからではありません。

問題は、
文書管理を“事務処理のルール”として捉えてきたことにあります。

現在の公文書管理規程は、
文書をどう整理し、保存し、廃棄するかを定めた
内部事務の規程です。
これはこれで、自治体運営に欠かせない基盤です。

しかし、住民や議会、監査が求めているのは、
事務が適正に処理されたかどうかだけではありません。

なぜその判断に至ったのかを、
住民に説明できるか。

ここで初めて、
文書管理は内部事務の問題から、
住民との約束の問題に変わります。

この点で、世界の行政機関も同じ課題に直面し、
その経験を踏まえて整理された考え方が
ISO 30301 です。

ISO 30301 が示している結論は明確です。

**文書管理とは、
文書を管理することではない。

行政判断を、後から説明できる状態に保つことである。**

この考え方を、
内部の事務規程だけに委ねてしまうと、
どうしても
「担当部署の努力」
「現場運用の工夫」
の話にとどまってしまいます。

しかし、
行政判断の説明責任は、
組織として、住民に対して負う責任です。

だからこそ、
この考え方は
事務規程である公文書管理規程ではなく、
住民との約束としての公文書管理条例

に位置づける必要があります。

条例に書くということは、
現場を縛ることではありません。

  • 何を説明責任の対象とするのか
  • どの段階の記録を重視するのか
    を、首長と議会が、住民に対して明らかにするという意味です。

文書管理とは、
事務の話ではありません。
行政への信頼を守るための、統治の基盤です。

補足(首長向け一文要約)

公文書管理条例とは、
文書をどう保存するかを定める条例ではなく、
行政判断をどう説明するかについての
住民との約束です。