公文書管理条例を読み解く〔兵庫県〕 ――歴史資料保存を軸に形成された制度を、行政記録管理の視点から読む
兵庫県の公文書管理制度は、
他の自治体と比較したとき、条例の書きぶりや制度の重心がやや異なって見える。
本稿では、
兵庫県の公文書管理条例について、
- どのような制度的前提のもとで制定されたのか
- 公文書管理法との関係はどう整理されているのか
- なぜ条例が簡潔・抽象的に見えるのか
を、制度の成立過程と構造から読み解く。
1.兵庫県には公文書管理条例がある
兵庫県には、
**「公文書等の管理に関する条例」(2019年制定)**が存在する。
この条例は、
- 公文書の作成
- 整理・保存
- 保存期間
- 保存期間満了後の措置
を対象とする、
公文書管理法を踏まえた包括的な条例である。
2.ただし、公文書館という名称の独立機関は存在しない
兵庫県には、
- 「○○県立公文書館」という名称の
独立した機関は設置されていない。
兵庫県において、
公文書・歴史資料の保存・利用を担っているのは、
兵庫県公館(歴史資料館部門)
である。
この点は、
他県の公文書館制度と比較する際、
最初に押さえておくべき重要な前提である。
3.公館(歴史資料館部門)は条例よりはるか以前から存在していた
兵庫県公館(歴史資料館部門)は、
1980年代から、県政資料・歴史資料の保存・公開を担ってきた。
- 公文書管理法(2009年)より前
- 兵庫県公文書管理条例(2019年)より前
に、すでに実体として存在していた施設・機能である。
この時系列は、
兵庫県の制度構造を理解するうえで極めて重要である。
4.条例は「既存の公館」を前提に後から整備された
兵庫県の公文書管理条例は、
- 新たに公文書館制度を創設するための条例
ではなく、 - 既存の公館(歴史資料館部門)の運用を前提として、
公文書管理法対応を制度化した条例
と読むのが自然である。
その結果、
- 条例本文に「公文書館」という名称は登場しない
- 保存・移管の具体像は、規則・指針に委ねられている
という構成になっている。
5.保存期間満了という考え方は、制度の前提にある
兵庫県条例では、
- 公文書は、あらかじめ保存期間を定めて管理される
- 保存期間が満了した後に、評価・選別が行われる
という考え方が、制度の前提として置かれている。
実際には、
- 条例の下位に位置付けられる規則・基準において
- 保存期間満了時に、一定の文書を
公館(歴史資料館部門)へ移管する基準
が定められている。
したがって、
兵庫県の制度は、
保存期間満了後評価型の公文書管理構造を採っている
と整理できる。
6.説明文・制度構造から見える重心は「歴史資料」
兵庫県公館(歴史資料館部門)の説明や役割を見ると、
- 県政の歩み
- 歴史的価値
- 文化・社会の記録
といった語が前面に出る。
一方で、
- 行政判断の過程
- 意思決定の説明可能性
- 不正抑止や事前牽制
といった、行政記録管理固有の文脈は、
制度の中心には置かれていない。
この点から、兵庫県の公文書管理は、
行政記録管理というより、
歴史資料保存を軸に構成された制度
と読むことができる。
7.なぜ条例が簡潔に見えるのか
兵庫県の条例が、
- 条文が少ない
- 評価主体や確認行為が明示されていない
ように見えるのは、
制度設計上の未熟さというより、
既存の公館運用を前提に、
条例では枠組みのみを定めた
結果と考える方が整合的である。
つまり、
- 条例で詳細を縛るのではなく
- 規則・指針・運用に委ねる
という選択がなされている。
8.他自治体が参照する際の注意点
兵庫県の制度は、
- 公館(歴史資料館部門)が長年担ってきた役割
- 歴史資料保存を重視してきた背景
を前提として成立している。
そのため、
同様の歴史的背景や制度基盤を持たない自治体が、
仕組みの一部のみを形式的に取り入れることには、
慎重さが求められる。
制度の外形だけを参照すると、
行政記録管理が本来担うべき役割との間に、
ズレが生じるおそれもある。
おわりに
兵庫県の公文書管理条例は、
公文書管理法を踏まえつつ、
既存の公館(歴史資料館部門)の運用を制度に接続する形で整備されたものである。
その結果、制度の重心は、
- 行政記録の事前的な統制
ではなく、 - 保存期間満了後の評価と、歴史資料としての保存・利用
に置かれている。
この構造を正しく理解することが、
兵庫県の制度を評価する際にも、
他自治体が参照する際にも、不可欠である。
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