はじめに

― なぜ、もう一度立ち返るのか

第1回では、自治体業務を
定形事務/事案処理型(ケース処理型)/プロジェクト型
という三つの**「仕事のかたち」**で整理しました。

本稿は、新しい分類を提示する回ではありません。
これまでの検討を踏まえ、
この三つの「仕事のかたち」が、
なぜ公文書管理を考えるうえで重要なのかを、
改めて簡潔に整理するための回です。

業務分類だけでは、捉えきれないもの

公文書管理というと、
ファイル基準表に代表されるような
業務内容による分類がまず思い浮かびます。

これは、公文書管理の基礎として欠かせない整理です。
どの業務で、どのような文書が生じるのかを明らかにすることは、
今後も重要であり続けます。

しかし、実務を見ていくと、
業務分類だけでは整理しきれない違いが現れます。

行政の仕事は、
すべてが
「定型的な受付・処理・整理・保存」
で進むわけではありません。

「仕事のかたち」という、もう一つの見方

そこで第1回では、
業務の名称や分野ではなく、
仕事がどのように進むのかという視点から、
三つの「仕事のかたち」を示しました。

  • 定形事務
    あらかじめ想定された手順に沿って、一件ごとに完結する仕事
  • 事案処理型(ケース処理型)
    特定の事案に紐づき、判断を伴いながら対応していく仕事
  • プロジェクト型
    目的と期間を持ち、検討や意思決定を積み重ねながら進む仕事

この整理は、
業務内容の違いを示すものではありません。
同じ業務であっても、仕事のかたちは異なり得る
という点を意識するための整理です。

「非定型」を分解した、という位置づけ

もともとは、
①定形、②非定型、③プロジェクト型
という感覚的な捉え方から出発しました。

検討を進める中で明らかになったのは、
「非定型」と一括りにしていた仕事の中に、
進み方の異なるものが混在しているという点です。

そこで本シリーズでは、
非定型という言葉をそのまま使うのではなく、
仕事の進め方の違いが見える形に整理し直しました。
その結果が、
定形事務/事案処理型/プロジェクト型
という三つの「仕事のかたち」です。

これは分類を増やすためではなく、
非定型の中身を分解し、
実務に即した言葉に言い換えたもの
です。

事案処理型の中にも、二つのタイプがある

なお、本シリーズでは、
事案処理型の仕事についても、
すべてを同じ性質として扱っていません。

事案処理型の中には、

  • 一度の対応で完結するが、
    判断や対応内容の重さから
    事案として整理しておく必要がある単発型と、
  • 特定の事案に紐づき、
    前回の判断を前提に、
    判断が時間をまたいで積み重なっていく継続型

の二つが含まれます。

本シリーズで主に取り上げてきたのは、
後者の継続型の事案処理です。
これは、定形事務の「例外」ではなく、
仕事の進み方そのものが異なる一つの仕事のかたちとして
意識しておく必要があるためです。

おわりに

― 公文書管理は、仕事のかたちを見誤らないことから始まる

公文書管理は、
文書を整理・保存するための技術論ではありません。

まず必要なのは、
いま扱っている仕事が、
どのような「仕事のかたち」なのか

を見誤らないことです。

業務内容による分類に加えて、
仕事のかたちという視点を重ねる。
この二つをあわせて考えることで、
判断を組織として引き受ける公文書管理が、
はじめて無理なく見えてきます。

本シリーズは、
実装や制度の話に入る前に、
その前提となる考え方を整理することを目的としてきました。
公文書管理を考える際の、
一つの土台として役立てていただければ幸いです。