最近は、「このシステムでは、ファイルの内容を変更すると自動的にバージョンが上がります。」という製品・サービスが増えてきております。
これらの製品・サービスのキャッチフレーズは、概ね以下のようなものです。
a)最新版がどれかわかりやすい。
b)誤って変更しても元に戻せる。
文書・情報管理という観点からはこの表現は危うさを含んでいますので、解説します。
文書・情報管理の観点からの類別
電子ファイルを管理するシステムは、ファイルサーバから文書管理システムまで様々です。そのような中、どのような目的で、そのシステムを利用しているかを意識する必要があります。
大きくは、次の4つのケースに類別できます。
- 個人管理で文書・ファイルを作成している。
- グループで共有して文書・ファイルを作成している
- 正式版としてFIXしている文書・ファイル
- 記録としての文書・ファイル。
それぞれのケースについて、「ファイルの内容を変更すると自動的にバージョンが上がる」ことが、ユーザーの嬉しさにつながるかどうか、順に見て行きます。
個人管理で文書・ファイルを作成している
個人の作業で、作成中の文書の文書を対象とした場合、確かに、最新版がどれかわからない場合、変更したものの元に戻したいケースはあります。
ですので、
a) 最新版がどれかわかりやすい。
b)誤って変更しても元に戻せる。
という嬉しさに繋がります。
グループで共有して文書・ファイルを作成している
複数人で、文書を作成している場合には、最新版のファイルに変更を掛けていく必要があり、誤って変更してしまって元に戻したいことも起きます。
したがって、
a) 最新版がどれかわかりやすい。
b)誤って変更しても元に戻せる。
という嬉しさに繋がります。
正式版としてFIXしている文書・ファイル
正式版としてFIXしている文書・ファイルについては、バージョンアップがある場合は、そもそも版管理を行います。重要なのは、むしろ、権限のある人やプロセスを通じて変更を行うことです。
したがって、「ファイルの内容を変更すると自動的にバージョンが上がる」こと自体は嬉しさに繋がりません。
一方、改ざん検知という別の観点からは、本来権限のない人や認めていないプロセスから変更を加えた場合、それが、文書・ファイルに改ざんの足跡として残るので有用と考えれます。
記録としての文書・ファイル
記録は、一旦登録すれば、変更するものではありません。重要なのは、むしろ、登録したものを改ざん、削除から防ぐことです。「ファイルの内容を変更すると自動的にバージョンが上がる」こと自体は嬉しさに繋がりません。
一方、改ざん検知という別の観点からは、本来変更・削除を認めていないので、バージョンアップがあった場合は、改ざんの足跡として残るので有用と考えれます。
改ざん防止策が甘いと、多重の改ざんを仕掛けられた場合、バージョン保持数に限度があるので、これに頼りすぎることはリスクが高いと考えます。
まとめ
「ファイルの内容を変更すると自動的にバージョンが上がる」という機能は有用であるが、利用ケースによっては、必ずしも、キャッチフレーズされている嬉しさに繋がるものではありません。
別途、版管理や改ざん防止策を講じておく必要があることに留意しましょう。
文書戦士
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